声楽における「支え」とは?身体の使い方を見直すヒント
声楽のテクニックにおける重要な要素、「支え」について、これまで私が先生から学んだことや、自分なりの考えをまとめてみました。
少しマニアックな話になるかもしれませんが(笑)、声を安定させたい方にはヒントになるかもしれません。
身体を使うとは、楽器を保つためのテンション!
「身体を使って歌う」とはどういうことでしょうか?
それは、楽器としての身体を“保つためのテンション”を常にキープするということです。
私たちはよく「リラックスして歌う」と言いますが、それは**「喉をリラックスさせる」**という意味。
もっと厳密に言うと、喉=喉頭のまわりの筋肉を適切にリラックスさせるということです。
身体全体がダラッとしてしまえば、声を支えるテンションが足りず、結果的に喉の力に頼ることになります。
つまり、リラックスするのは喉頭まわりの筋肉であり、身体全体は常に楽器としてのテンションを保たなければなりません。
横隔膜を使って歌うということ
「身体を使う=横隔膜を使う」というのも、大切なポイントです。
しかし、私たちは言葉を話すようになると、横隔膜を意識的に使うことが徐々に少なくなってしまいます。
たとえば、犬や猿、赤ちゃんは、自然と横隔膜を使って声を出しています。
喉まわりには余計な力が入っておらず、むしろ声が“突き抜ける”ような印象です。
一方、大人になると、訓練されていない方の多くは、横隔膜を使わず、声帯を無理に閉じて声を出そうとしてしまう傾向があります。
そんな時には、動物の遠吠えや赤ちゃんの泣き声をイメージするのが、意外と効果的なんです!
声楽を学ぶことは、私たちが忘れてしまった「野生的な身体の使い方」を思い出すことから始まるのかもしれません。
「支え」とは何か? 〜横隔膜(上腹部)と丹田(下腹部)の関係〜
では、「支え」とは何でしょうか?
それは、横隔膜(上腹部)と丹田(下腹部)の筋肉による、内外・上下の拮抗した力だと私は今は考えています。
ブレスを吸うと、みぞおちの辺りが膨らみます。
これは、横隔膜が下がることで内臓が下方に押されるために起こります。
同時に、下腹部(丹田)から横隔膜に向かって引き上げるように力を入れます。丹田の位置は、大体へそから指三本下の場所になります。この時、下腹部は凹みます。
- 横隔膜は 上から下へ、内から外へ 向かうテンションを感じるように
- 丹田は 下から上へ、外から内へ 向かうテンションを感じるように
これらを意識しながら筋肉をコントロールしていきます。
最終的に、上腹部から下への力と、下腹部から上への力がみぞおちの位置、つまり横隔膜で拮抗したとき、「支え」が生まれます。
この内外・上下の力のバランスが「支え」を作り、
そのエネルギーが、自然なビブラートやレガートを生み出してくれます。
昔の自分はどうだったかというと…
学生の頃、「お腹で支えなさい」とよく言われました。
でも、実際にどうやって?というところがずっと曖昧でした。
- 腹筋にただ力を入れて固めてみたり
- みぞおちを突き出すようにしてみたり
- お腹を引っ込めることだけを意識してみたり…
どれも筋肉の使い方がちぐはぐで、結果的に喉の力に頼ってしまう歌い方になっていたのです。
筋肉を「使っていないように使う」感覚
この**拮抗した「支え」**がしっかりとれてくると、
まるで筋肉を使っていないかのような軽やかさを感じるようになります。
でも実は、見えないところでたくさんの筋肉が働いてくれているんですね。
だからこそ、筋トレの大切さを日々痛感しています。
最後に
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
ちょっとマニアックだったかもしれませんが(笑)、少しでも何かヒントになればうれしいです。
私のレッスンでは、それぞれの生徒さんの身体の癖を見つけて、正しい使い方へと導くサポートをしています。
興味のある方は、ぜひ一度レッスンを体験してみてください!