現実を忘れ、夢の舞台へ—オペレッタの世界
みなさん、「オペレッタ」って聞いたことありますか?
オペラよりも軽やかで、笑いあり、踊りありの楽しい音楽劇。
でも、その中には実は深いメッセージや、時代を映す背景も詰まっています。
今回はそんな「オペレッタ」の魅力を、歌い手目線でわかりやすくご紹介します!
「オペレッタ」とは、歌と台詞、そして踊りによって構成される、ヨーロッパ発の音楽劇です。
軽快で楽しく、観る人・聴く人すべてが気軽に楽しめるのが魅力。
まさに、“喜び”と“笑い”に満ちた舞台芸術です!
オペラとオペレッタ、何が違うの?
実は、オペラとオペレッタの間に明確な線引きはありません。
作曲家がどちらとして作品を位置づけたかという違いです。
とはいえ、一般的な傾向としては以下のように区別されています。かなりざっくり説明してます(笑)
<オペラ>
- 芸術性が高く、喜劇も悲劇的な内容どちらもあり
- すべての台詞が歌で構成されている
- 特にイタリアではその伝統が強い
<オペレッタ>
- 明るく、ユーモアのあるストーリー
- 台詞・歌・踊りが入り混じる構成
- 娯楽性が高く、基本的にはハッピーエンド
- 社会的・文化的な背景とも密接に結びつく
ドイツでは、もともと台詞のあるオペラ(ジングシュピール)も存在し、
そこからオペレッタが発展した歴史もあります。
ミュージカルとの違いは?
ミュージカルは、オペレッタから派生し、英語圏(ロンドン・ニューヨーク)で発展した舞台芸術です。
違いとしては…
- ミュージカルでは役柄ごとに「声種の指定」がなく、移調して演じることも多い
- マイクを使用し、ドイツでは小劇場で上演されることが多い
- 踊りの比重がより大きい
オペレッタは基本的に移調しませんし、声楽的な訓練をベースとした歌唱技術が求められます。
オペレッタの始まりと広がり
オペレッタの歴史は、**1855年 パリの「ブーフ・パリジャン座」**から始まります。
作曲家オッフェンバックの音楽喜劇『二人の盲人』が初演され、
その後、代表作『天国と地獄』でパリの民衆の心をつかみました。
オッフェンバックの作品はやがてウィーンに渡り、
そこからウィーン独自のスタイルをもつ「ウィンナー・オペレッタ」が発展していきます。
そして、第二次世界大戦以前まで、オペレッタはヨーロッパの人々にとって最大の娯楽のひとつとなりました。
ウィンナー・オペレッタとベルリン・オペレッタ
《ウィンナー・オペレッタ》Wiener Operette
〜黄金の時代〜
- フランツ・スッペ
- ヨハン・シュトラウス2世
- カール・ミレッカー
- カール・ツェラー
〜白銀の時代(第2の黄金時代)〜
- フランツ・レハール
- エメリッヒ・カールマン
- ロベルト・シュトルツ
《ベルリン・オペレッタ》Berliner Operette
- パウル・ペナツキー
- エドゥアルト・キュネッケ
ウィンナーワルツとオペレッタの関係
ウィンナー・オペレッタに欠かせない要素が「ウィンナーワルツ」。
ウィンナーワルツとは、ロマンと官能が交差する、甘く切ないワルツの世界。
美しいメロディの宝庫でもあり、構成や和声は比較的シンプルで、ポピュラー音楽とも共通点があります。
そのため、多くの人々にとって親しみやすく、心を動かす音楽となりました。
ウィーン会議と音楽
「会議は踊る、されど進まず」——
1814年のウィーン会議の様子を皮肉ったこの言葉。
ウィーンの街は、政治の裏で音楽と舞踏に彩られていました。
そんな複雑な歴史と哀愁を背負ったウィーンの街から、
ただ“美しい”だけではない、切なさや官能、刹那的な感情をまとった音楽が生まれました。
ヨハン・シュトラウス2世と『こうもり』
「ワルツ王」と呼ばれるヨハン・シュトラウス2世。
彼が本格的にオペレッタ作曲に取り組み始めたのは、なんと40歳を過ぎてからでした。
そして、1874年、48歳で完成させた傑作が《こうもり》!
この作品は、ウィーン音楽とオペレッタの到達点とも言われています。
1873年 ウィーン万国博覧会と時代背景
万博開催を機に株式市場はバブルとなり、しかしその後崩壊。
大恐慌、失業、自殺者の増加、コレラの流行…
まさに混迷の時代でした。
そんな中、『こうもり』の中の有名な台詞が、人々の心を救います。
つかの間の幸せを楽しもう
悪いことはみんな忘れてしまおう
すべてシャンパンの泡のいたずら
現実を忘れ、夢の世界へ
オペレッタの舞台では、現実の苦しみや辛さを一時忘れ、夢のような世界に身を委ねることができました。
だからこそ、当時の人々にとって、オペレッタはただの娯楽ではなく、
生きるための希望や癒しだったのかもしれません。
おわりに
オペレッタは、楽しくて、華やかで、でもどこか哀愁があって…
歌いながら、自分自身も舞台の魔法に引き込まれていくような、そんな魅力があります。
ぜひあなたも、オペレッタの世界に一歩踏み出してみませんか?
オペレッタを「観る」だけではなく、「歌う」楽しさも、ぜひ体験してみませんか?
レッスンでは発声やドイツ語の歌唱発音はもちろん、オペレッタの名作を一緒に学ぶこともできます。
興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください!
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!