コンサート情報 Lieder Matinee VI《In den Traum – Im Klang der Liebe》夢へ ― 愛の残響をつれて

新しい年のはじまりに、ドイツ・リートの響きをお届けします。
愛と夢、孤独と祈り――それぞれの詩人が描いた心の景色を、
世紀の変わり目を生きた作曲家たちの音楽とともにたどります。

公演情報

日時:2026年1月31日(土)14:00 開演(13:30 開場)
会場:白金音楽堂(東京都港区白金3-10-16 白金望月ビル2階)

出演

北嶋 信也(テノール)
嘉目 真木子(ソプラノ)
浅野 未麗(ピアノ)

プログラム

  • Josef Marx(ヨーゼフ・マルクス)
    Japanisches Regenlied/Hat dich die Liebe berührt/Selige Nacht
    (テノール:北嶋信也)
  • Richard Strauss(リヒャルト・シュトラウス)
    Breit über mein Haupt/Liebeshymnus/Wer hat’s getan?
    (テノール:北嶋信也)
  • Gustav Mahler(グスタフ・マーラー)
    Fünf Lieder nach Rückert
    (ソプラノ:嘉目真木子)
  • Hugo Wolf(フーゴ・ヴォルフ)
    Liederstrauß(Heine-Lieder)
    (テノール:北嶋信也)
  • Alban Berg(アルバン・ベルク)
    Sieben frühe Lieder
    (ソプラノ:嘉目真木子)

チケット

一般:4,000円 / 当日:4,500円 / 学生:2,000円

主催

KITAJIMA MUSIC WORKS

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折り返し、確認のご連絡を差し上げます。


テーマについて

今回のテーマ「In den Traum – Im Klang der Liebe(夢へ ― 愛の残響をつれて)」は、
夢と愛、そして記憶の中に響く“もうひとつの世界”を描く詩人たちへのオマージュです。
マルクスやシュトラウスのロマンティックな愛の歌から、
ヴォルフやマーラー、ベルクの内省的な世界まで、
時代とともに変化していく「愛のかたち」と「響きの表現」を一つの流れとしてお聴きいただけます。

夢と現実のはざまに漂うような午後のひとときをお届けしたいと思っています。


各作曲家と作品について

Josef Marx(ヨーゼフ・マルクス 1882–1964)

オーストリアの作曲家ヨーゼフ・マルクスは、19世紀後半のロマン派の香りを色濃く残しながら、
色彩豊かな和声と幻想的な響きを自在に操った“最後のロマンティスト”とも呼ばれます。
彼の歌曲は、豊かな旋律と官能的な響きに満ち、まるで夢の中を歩くような世界を描き出します。
本プログラムでは《Japanisches Regenlied》《Hat dich die Liebe berührt》《Selige Nacht》の3曲を取り上げます。
いずれも愛と自然、そして夜の静けさを詩的に描いた作品で、心の奥深くに降り注ぐ“愛の雨”のような静かな感動をもたらします。

Richard Strauss(リヒャルト・シュトラウス 1864–1949)

オペラ作曲家として知られるシュトラウスは、250曲を超える歌曲を残しました。
彼のリートには、妻パウリーネとの関係から生まれた愛の喜びや葛藤が、繊細に映し出されています。
《Breit über mein Haupt》《Liebeshymnus》《Wer hat’s getan?》は、若き日の情熱と成熟した詩情が溶け合う作品群。
豊かな和声と旋律が、愛の高揚と優しさを巧みに表現します。

Gustav Mahler(グスタフ・マーラー 1860–1911)

《Rückert-Lieder(リュッケルトの詩による5つの歌曲)》は、マーラー晩年の内省的なリート集です。
“静かな悟り”のような境地がこの作品にはあります。
「Ich bin der Welt abhanden gekommen(私はこの世に忘れられた)」をはじめ、
孤独の中に見出す愛と安らぎが深い感動を呼びます。
マーラーの音楽の中で、もっとも純粋に“魂の声”が響く作品の一つです。

Hugo Wolf(フーゴ・ヴォルフ 1860–1903)

ヴォルフは19世紀後半のドイツ・リートにおける重要な作曲家のひとりです。
《Liederstrauß(Heine-Lieder)》は、ハイネの詩による7曲から成る小さな歌曲集で、
繊細な和声と劇的な展開、詩の細部への深い洞察が特徴です。
夢、恋、皮肉、哀しみ――ハイネ独特の感情の振幅が、ヴォルフの音楽によって一つのドラマのように描かれます。

Alban Berg(アルバン・ベルク 1885–1935)

ベルクの《Sieben frühe Lieder(七つの初期の歌)》は、20代前半に書かれた作品で、
後期ロマン派から新ウィーン楽派への橋渡し的な位置にあります。
官能的な旋律と大胆な和声、そして夢のように移ろう響きが印象的で、
“愛”という感情がもつ美と危うさを繊細に描いています。
マーラーの系譜を受け継ぎながらも、より内面的で表現主義的な要素を加え、
愛の感情が持つ光と影、美しさと儚さを浮かび上がらせています。


テーマのつながり

マルクスやシュトラウスの「まどろむような愛の歌」から、
マーラー、ヴォルフ、ベルクに至る「夢と現実の境界線」まで――
それぞれの作品は、作曲家たちの時代と視点を映しながら、
“愛”という普遍的なテーマをさまざまな角度から照らします。
リートの中に宿る「夢」と「響き」の物語を、どうぞ会場でお楽しみください。


北嶋信也より ― 選曲の意図

「夢」と「愛」というテーマを、時代や作曲家の異なる響きの中に見つめます。
それぞれの作品には、現実と幻想、喜びと孤独に揺れる心の瞬間があり、
その移ろいの中に“歌”が生まれ、響き続けます。

ヨーゼフ・マルクスやリヒャルト・シュトラウスの作品では、愛が光のように世界を包み込み、
ヴォルフ、マーラー、ベルクの作品では、内面の祈りや孤独の中にその余韻が深く響きます。
ひとつのテーマを多様な作曲家の視点から辿ることで、
愛のかたちが少しずつ変化しながら、新しい意味を映し出していく――
その流れを、音楽とともに感じていただければ幸いです。

―― 北嶋 信也